樹木を弱らせる大敵のひとつが、
木材腐朽菌

キノコであるとか、広く一般には「サルノコシカケ」というイメージを持たれているものです。

木材腐朽菌という名前の通り、木材すなわち樹木を腐らせ朽ちさせる菌です。
この菌が体に侵入すると、樹木は内側からじわじわと食べられてしまい、やがて体を支えることが難しくなってしまいます。

驚くべきことに、樹木は体の内側が空洞でも生きられるのですが、やはり柱となる部分を失うと倒れたり、折れたりしやすくなります

そうならないためにはキノコを見つけ次第取り除くことが必要なのですが、体の内側に根をはるキノコを取り除くことは、物理的には難しいです。
確実に樹木の体そのものを傷つけることにもなってしまいます。

そんなときに協力してもらうのが、
これもまた「菌」です。

菌の天敵は菌

キノコを食べる生き物は、ヒトも含め、たくさんいます。キノコを食べる昆虫もいますし、もちろん、菌を食べる菌も、自然界にありふれています。
土の中にはそういった菌がたくさんいます。

今回はその菌の力を早急にお借りしたく、土着の菌たちではなく「お呼びして」、キノコを食べてもらおうと考えました。

今回は
トリコデルマ菌
という菌をお呼びしました。

キノコもたくましい生き物なので、この菌に食べられるばかりではありません。天敵が来て居づらくなり、どこかへ引っ越すだけです。
しかし、それでいいのです。
駆逐ではなく、お引越し願う、それだけです。

木材腐朽菌は胞子の姿でいたるところにいます。日本のように湿度の高い地域では、目に見えない大きさの菌がたくさんいます。

温暖湿潤といわれる気候の下で生きるとなれば、こういった目に見えない隣人(菌)たちとも仲良くしていきたいですね。

 

青緑色になっているところが、トリコデルマ菌を付着させたところです。

 

 

樹木医・中村