樹木医とはそもそも、なんでしょうか。まずは、樹木医というものが生まれた経緯をご説明します。

まもなく終わろうとしていますが、平成という時代は樹木医を生み出す時代でもありました。

平成では、酸性雨などの環境ストレスによる森林樹木の衰退が地球規模で問題とされ、その原因解明に向けて世界的に取り組まれ始めました。日本の都市部における森林樹木の衰退現象は、大気汚染を始めとする環境の悪化に伴い1960年代から指摘されてきました。

このような緑の衰退に対処するために、平成3年に「故郷の樹木保全対策事業」が林野庁の国庫補助事業として発足しました。

この事業の趣旨は、「全国各地の貴重な巨樹、名木、古木林などの樹勢を回復させ、保全するため、高度な専門技術を有する樹木医を養成認定する」ことを目的としています。このような形から、樹木医認定制度が創設されました。

樹木医は環境の保全のため、常に識見の向上、技術向上などの自己研鑽に励むことを使命としています。

樹木は動きませんが、生物であるという意味では我々人間と同じです。

人間にはお医者さん、動物たちには獣医さん、樹木には樹木医といったところでしょう。

樹木医の倫理は人の医療を行うこととは本質的な違いはありますが、樹木という生物を扱うことから、科学的な根拠に基づくとする考え方は共通であって、科学的根拠に基づく診断を目指すことにあります。

①高度な学識と技能の向上を目指すこと

②樹木の活き様に関する十分な知見を有すること。

③臨床の説明責任を果たすこと

④臨床事例を共有すること

以上が樹木医の倫理として、樹木の診断・治療に当たって心がける要点です。

樹木は、単に身近にあるだけでなく、地球規模で重要性が認識されています。

日本は国土の7割が森林といわれています。森林は水源にもなり、私たちの生活を根底から支えてくれるもののひとつでもあります。

また私たちは、木材としての樹木、御神木としての樹木、芸術としての樹木、歴史としての樹木など、様々な意味合いを樹木にもたせて暮らしてきました。

樹木と人間は生命活動というだけでなく、文化活動としても密接に関わってきた歴史があります。

人間の生活には樹木、森林、そしてそれに関わるすべてのものが、切っても切れない関係として関わっています。

樹木や森林だけでなく、もちろん大気や海、地面、宇宙・・・生きている以上、森羅万象あらゆるものが私たちに関わっているのですが・・・

その中で私は樹木、森林の道を選び、学んでおります。

私一人のできることは微々たるものですが、樹木医としてまずは樹木、やがては森林を守る一役を担う存在になれればいいなと思っております。

 

樹木医・中村