本日、休日を活用して山形県まで足を運び、
長年NPOで治療を続けている一本のサクラ(エドヒガン)の診療に立ち会ってきました。
いま、横浜に戻る新幹線の中でこの文章を綴っています。
そのサクラは、「樹齢1200年」と語られることもありますが、実際のところ、それはやや大げさ。しかし、樹齢500年は間違いなく超えていると思われる、貴重な老木です。
かつては、春はに可憐な花を咲かせ、多くの人に希望と安らぎを与えてきたその姿も、
近年では治療困難な病気にも冒されるようになり、処置も難しさを増してきました。
私たち樹木医は、「木を治す人」ではありますが、万能ではありません。
樹は生き物です。どんなに努力しても、全ての命を救えるわけではありません。
けれども――
今日、そのサクラの傍に立ち、樹木の鼓動を感じ、ほんの少しでも快方に向かう手助けができたのなら、それだけでも十分に意味があるのだと、改めて感じました。
病と闘うその老桜の姿は、どこか人の命にも重なります。
時間と共に弱りながらも、季節が巡れば花を咲かせ、誰かの心に残る。
そうした「命」に寄り添うこの仕事の尊さを、改めて思い知らされる一日となりました。
樹木医・中村