少し引きこもり気味な次男が、ある日、長女と出かけた後に「ベースを弾いてみたい」と言い出した。普段はゲームに多くの時間を費やしている彼が、こうしてリアルな行動を起こしてくれたことが、私にはとても嬉しかった。
ふと思い出したのが、高校時代に使っていた私のベース。すぐに押し入れから引っ張り出し、次男に手渡した。何十年も眠っていたベースが、まさか息子の手でまた音を奏でることになるなんて。不思議な縁を感じて、なんだか面白いなと思った。
ただ、ふと気づいたのは、ベースを始めた動機が全く違うこと。次男は、長女との何気ない会話をきっかけに純粋な興味から弾きたくなったのだが、私が高校時代にベースを始めた理由は実に単純で、「モテたいから」だった。バンドで一番目立てるのはエレキギター。バンド仲間で一番人気者がエレキを担当し、私は仕方なく あまり目立たないベースを選んだ。正直なところ、そんな軽い気持ちだったからか、長くは続かなかった。
そんな昔の自分と、今の次男を重ねながら、少し違う道を歩み始めた彼を、今日はただ静かに見守った。